2016年以降のケータイ業界について考えてみる(総務省”携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース”)

さっそくですがクリスマスで賑わう年末に2回線ほどMNPしてきました。買ったのは型落ちですがiPhone6 64GBを2台。MNPなので一括0円。CBは2台で4万円いただきましたが既存ユーザーが機種変更すると8.7万円/台。これとは別に毎月割が各回線で2万円程度(これを24分割)。さらに1年間はどちらの回線も基本料が半額(1350円×12か月分)など、いろいろ割引がてんこ盛り。

iphone

通信料は払うことになりますがシェアプラン等を組み合わせればコストは削減は可能。契約するだけで端末もらえて、毎月も割引されてありがたいですね。
と、こんなことを書きましたが今後このようなことが出来なくなる可能性が出てきました。

ご存じのとおり、ケータイは1人1台もちのが当たり前になり、下手すりゃ複数持ちも・・・。1回線あたりの売上もスマホ普及で5-6000円台(端末のカップ代金等は除く)となり、ケータイ各社は国内企業の利益規模でも上位に入るほどの会社となりました。

利用者視点で見ると、給与はボーナス等一時金が増えるケースはあってもベースはあまり上がりにくい御時勢。でも税金は上がる。コドモが居れば学費等いろいろお金が飛ぶ。その上1人1代スマホで1人あたり5-6000円の電話料金も発生する。(実際端末代金割賦払いしていれば8-9000円ぐらいなってる人も多そう)

そりゃ少しは家計負担減らしたいと思う訳で、かしこい人は一括0円とかを有効活用していたし、MVNO登場でこちらに乗り換える人も出てきた。ただ大多数の人はそんな努力せずに、ただ高いことを受け入れてきた。一方現首相はデフレからインフレへ転換するため日銀と一緒に金融緩和等いろいろややってきたが残念ながら、その効果は企業や株主、そして株式公開している会社の従業員ぐらいまでは多少なりともメリットがあったが、中小企業等ではあまりメリットが得られていなかった感も。これではますます負担が増すものと儲かってる人の差が増しつつあるので、首相として目をつけたのが誰もが持つようになったケータイを下げさせるという案。

まぁ、首相による本騒動が出た背景には、きっかけとなる発言の後に内閣改造があって、再任された現総務大臣は再任されるか不透明だったのでこのタイミングで首相へのアピール(話題作り)をしたかったという点もあったし、総務省も新規参入促進等いろいろやったけど、うまくいかなくて寡占が進んでしまっていたから抵抗するほどの断る理由もなかったという多少思惑の一致もあった。

で首相の発言から始まったこの騒動は、高市総務相によるタスクフォースが開催されいろいろ検討?された結果、12月に方針が示されたが、内容としてはすでに既出の通り。で、これで安くなるか?と言えばごく一部の方のみ安くはなるが、残念ながらほとどの方が安くならないが正しい回答となる。

それでは今回の内容について改めて振り返ってみよう。

携帯電話の料金その他の提供条件に関する タスクフォース 取りまとめ

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資料を直接見てもらえればというのもあるが、ここで示された方向性は上記のスライド。でさらに簡潔にまとめると以下となる。

1、年齢や機種を限定せずライトユーザも利用しやすい料金プラン検討(5000円以下) 具体的には、データ容量少ないプランの創設、かけ放題プランとデータプランの組み合わせ柔軟化。低容量データプランの低廉化

2、端末購入補助を受けない長期利用者等の負担の軽減になるような料金プラン等の検討。具体的には、買い換えない利用者への料金割引、端末購入補助がない代わりの低廉プラン創設

3、スマートフォンを「実質0円」にするような高額な端末購入補助は著しく不公平であり、MVNOの参入を阻害するおそれがあるため、不公平を是正する方向で補助を適正化

4、行き過ぎた端末購入補助の適正化としてMNPをして端末購入する者と新規契約・機種変更する者との間で著しい差があることや、料金プランによらずに一定額の端末購入補助となっていること等を見直すこと。(発売から期間が経過した「型落ち端末」などについて、 端末購入補助の適正化の取組の対象とすることは、端末の流通に与える影響が大きいと考えられるため、その扱いについて配慮をすべき)

5、MVNOのサービスの多様化を可能とする加入者管理機能について、ガイドライン上「開放を促進すべき機能」と位置づけることによって、事業者間の協議を加速すべき。

と言うように纏められている。
この中で朗報かもしれないのが「かけ放題プランとデータプランの組み合わせ柔軟化」だと思う。かけ放題のライトプランがタスクフォースでの検討タイミングで登場したけど、データ容量が5GB(3GB)以上のプランじゃないとダメという制約が付く。この制約がなる可能性があるし、ドコモにおいてはAU、ソフトバンクみたいに980円のプランが復活する可能性もある。

これは、人によって意見は異なるが長く使う人にとっては「MNPをして端末購入する者と新規契約・機種変更する者との間で著しい差があることや、料金プランによらずに一定額の端末購入補助となっていること等を見直す」かな?こちらは、端末購入補助を見直せという話だが、同じキャリアに残り続け機種変更するユーザーに対しては補助金額は一番少なかった。(釣った魚に餌をやらない) 今回の方針で新規やMNPの補助額を見直せと言っているので、機種変との差がなくなる分幾分気持ちとしては不公平感が減ることになると思う。ただポイントは機種変更ユーザーに補助額を増やせ!とは一言言っていないから安くなることはありません。

あとは「買い換えない利用者への料金割引」かな。実は、今でも端末購入時に付帯される毎月割のせいで毎月割が終わる高くなるように感じるなどややこしくなっているが、あれを一旦忘れてもらった状態で料金プランを見ると、2年契約する時としない時で異なる料金設定がされている。故に買い換えなくても一定期間の継続を約束していれば割引は受けていることになる。(ただ最初から2年契約とかしちゃうから、全く持って安くなった感はないけどもね)
今回購入補助を使わない人に料金安くしろという話なので、キャリアが購入補助費用を何年間の利用で回収するか?次第なんですけど、その期間を過ぎた後ならば多少なりとも還元されるような施策が入るかもしれません。(ちなみに、各キャリアのユーザーをならした平均契約期間は3-4年と言われています。ということはその前提で得られる収入そして利益がを前提に補助額を決めている可能性があるので、3-4年以上契約した人に優遇されるような施策が出てくるかもね。それが今のスマホの技術革新とかとマッチするかは謎ですが。)

さて、そろそろ残念なお話に移りましょう。

まず読んでいれば判ると思うけど、たくさん使っている人に対しては何も触れられていないということ。すでにスマホに慣れ親しんで、動画たくさん見たり端末のストレージではなくクラウドにデータを保存しちゃっているような方々については、残念ながら毎月の料金が変わることはないと思う。逆に後述する端末購入時の適正化で2年おきに新規やMNPをしていた方にとっては購入時の費用負担が増える可能性がある。

ちなみに、見た目の費用を下げるべく低容量プランで使い続ける方法もありますが、年々webサイトはリッチ化されているし、動画やクラウド化も浸透し、アプリのアップデートも頻繁に行われているから少しでも使うと早々に上限に到達。今後もこの流れは変わらないですから、あっと言う間に上限になって急に128kbpsなど低速でしか使えなくなり、いろいろ不満がたまって結局プランを戻すことになると思う。

次いでは、さっき人によっては朗報としていた端末の購入価格の見直し。新規と機変で優遇差を無くせとも言ってますが、それ以上に問題なのは「実質0円」の見直し。これは2つ気になる点があって、一つは現在一般的な「毎月割」そのものを見直せというお話。そしてもう一つは毎月割の金額(端末購入補助額)を見直して実質0円=タダで貰えるような施策はするな?というお話。
前者を仮に辞めるということになれば、年々高騰しているスマホ代金をユーザーは一括で購入することになります。もしくはキャリアがあっせんする会社とローン契約を結んでもらうなど現状のような一体的な提供と見せないようにする可能性が。最近一部の電話機メーカー、中華系メーカーなどが低価格な端末を投入し始めていますが、日本人は高いものを買う癖、みんなが買っているものを買う癖があるので買いたいけど金なくて買えないと言った人も出てくるはず。ケータイでも収入格差による二極化が徐々に出てくる可能性があります。また、端末が高くなれば長く使う人も増えます。そうするとキャリアショップ(代理店)さんの収入は上がったりで統廃合も出てくるかもしれません。また機種変更する期間が伸びるということは端末の出荷も減るということ、そうなると国内の電話機メーカーはさらに売れなくなるので事業的に厳しくもなりますし、販売した端末のOSアップデートほかセキュリティー面のサポートも今以上にする必要が出てきます。それこそ現在キャリアが売っているAndroid端末はせいぜい1度osアップデートするぐらい。あとは買い換えてくれと言わんばかりだった訳ですが、今後はもっと対応させる必要がありますのでキャリアもメーカーもその分費用を転嫁してくると思います。結果としてユーザの負担は増えますし、PCの業界のような古いOSを長く使い続ける人が増えるがためにセキュリティーに脅かされる(特に個人情報に近い情報が端末なにはありますから、やられたらダダ漏れになる可能性も)可能性も増えてきます。またこれはサービスを作る開発者にとってもネガティブに作用します。サポートするOSが増えるということはその分動作検証にも時間がかかるし、すべてで動作するように努めようとしますから最近の機能を活用することは避けようとします。結果として新しい機能を活かした表現とかは使われない可能性があり、それは最終的にスマホの発展スピートが遅くなるかもしれません

そして後者がダメになると、何らかの費用は新規・機変共々払えということになります。前述の通り単に新規MNP向けの補助額が減って機種変更と同じなるだけかもしれませんが、そうなると機種変するタイミングがさらに長くなる=長く使う人が増える可能性が増えますし、メリットが無ければキャリアを乗り換えるような流動化はより減るかもしれません。ちなみにMNPの利用率はあれだけ一括0円だ、キャッシュバックだ!と言われながらも20%以下ですので、さらに下がることになりますね。そうなるとMVNOへの移行が増えるか?と思うのですが、こちらもなんとも言えませんね。MVNOはキャリアから通信網の帯域を一部借りているのですがこの借りている帯域量は各社異なります。当然契約者数が違いますから異なって当たり前ですが、最繁時における1人あたりの速度等をどの程度とするか?も異なりますから、通勤時・昼・夜などよく使われる時間帯では、とあるキャリアでは速度が遅く不満に感じるが、とあるキャリアではたくさん契約者が居ても一定速度はキープしている。なんて具合に品質がバラバラで、しかもそれを可視化できていないので自分で契約して自ら体験するか口コミ情報で判断するしかない。その上MVNOですら音声契約では1年間の縛りがありますから失敗すると痛い。(薄利多売でやってるから借りる帯域増やすとその分利益を圧迫するのです。故に契約者数に応じてほとほどの帯域だけ借りたいと思ってしまう。)

先のことだけでも十分ネガティブなんだけど、一番の課題は店舗契約ができない、トラブル時のサポートに期待できないことです。キャリアショップに駆け込んで店員さんに代わりに操作してもらうなんてこともできません。自分でFAQとか見る、繋がらないサポートセンターに電話して聴きながら操作するほか原則自分で解決なんです。ましてや別のキャリアとかでSIMフリーな端末を買ってMVNOに乗り換えて契約なんて、それこそ何かトラブルあれば自分で解決です。IPHONEなんかも最新機種が販売された当初はドコモでは正常に使えても、同じドコモ網を使うMVNOに乗り換えると電波つかめないなどトラブルが生じることがしばしば。そのため専用のキャリアプロファイルがMVNOがリリースするまで待つしかないなんてこともありますが、弱小なMVNOあたりはサポートすらできないと思う。そんな状況をしっかり渡り歩けるのはスキルのあるアーリーアダプターぐらい。総務省さんが期待しているマジョリティー層にはハードルが高いです。

結局そのままキャリアに残り続けるとは思います。

まぁ細かい部分をつつけばいろいろ問題点はたくさんありますので、メリットよりデメリットが多い方向性なんですけど、最後にもう一つ言っておきたいことは皆さんにとってお得になることはあまりないし、逆に今回のことでキャリアはさらに利益が増えることになる可能性が高いです。(首相が通信キャリアをいじめてユーザーに還元させているように見せかけて結果はユーザーの負担が増えて、政府に収める税金が増えるぐらい。でも法人税減税するからキャリアの利益が増えるだけだな)

今回、端末購入補助を見直すことになり、しかも実質0円もするなとなりましたから無理してお金を積む競争する必要はなくなりました。故にユーザーにほどよく補助金を積む程度で済む分、利益を確保しやすくなりますし、よく使う人へのプランの見直し指示はされていませんから今まで通りにできます。それこそライトユーザーに安いプランを用意しても今後お得意様として見るのは期間よりも支払額が重視されるはずで、購入優遇等も支払額が多い方を優先と傾斜していくはずです。(ライトプラン選ぶと結果として高くつく可能性も出てくるってことです)
 
長々と書いてきましたけど、またも総務省は愚策で自国民を苦しめることになるんだな・・・とあまり良い結果にはならないなぁというお話でした。