8年越しの実現か? 紆余曲折の末、ANAがA380を導入へ(2016/1/1)

日経と言えば政治経済などの記事に重きをおき、ビジネスマンならば結構な人が習慣的に見ていると思うが、違う見方をすれば政治的な意図で使われる媒体だったりもする。ほぼ決定した情報を発表数日前に報道する場合もあれば、感触を確認する、すでに没な話だけどネタとして流すケースも。簡潔に言えば当たるも八卦、当たらずも八卦な媒体なのですが、新年早々飛び出したのが「ANAがA380を導入」という記事。

ANAがA380を導入する?という話は、実は今に始まったことはない。直近では支援することになったスカイマークの騒動の時。スカイマークの債権者から支援者として認めてもらうために、スカイマークが発注したものの完成前にキャンセルし大損を被ったエアバスに対してA380を買っても良いと仄めかし同意を取り付けようとした時。実際はANAと決まったタイミングで撤回。債権者の怒りを買い、新たにデルタを担いだ一派と支援計画決定に向けて一騎打ちすることになった。(このタイミングで最終的にANAはエアバスにA380買うと約束する羽目になった。それが今回の話になる)

と、スカイマーク騒動でA380の話題が出ていたが実際ANAは2008年段階で自ら導入を計画していた

ANA A380導入に向け調整開始 9月までに決定へ

当時の振り返りだが、客単価の高い海外路線を収益の柱にしようと思っていた中で、日本人だけでなく外国人の利用者も増やす、エコノミーよりビジネスシート増やして利益率高めようとしていたので、シンガポール航空含め海外勢数社が導入し”豪華な仕様”で展開すると言っていた故に、他社との競合に勝つためにキャッチアップする思惑もあったようだし、また燃料高騰していた時期で、さらに航空業界のトレンドとして飛行機輸送は昔からの大型機材での大量輸送ではなく小型機多頻度輸送するトレンドになりつつあった頃。いくら燃費の良い小型機でも複数便運航すれば燃料費は大型機1機飛ばすより高くなるため、逆にこのトレンドに反して昔の大型輸送に戻そうと考えた節もある。(特に中小型機による多頻度輸送のトレンドを後押しするためにボーイングは最新鋭B787を開発していたがご存じのとおり何度も遅延していたので、ANAの機材計画=路線展開等とズレが生じはじめていたことも背景にあった。

結果としては、ANAはA380は導入せず、B787ローンチまで待ち続けていたのだがもう少しB787が遅れればA380が導入された可能性もあったかもしれない。

と昔話が膨らんだが、今回の記事は本当?またガセ?どっち?となる訳だが、今回は買うと思う。いや買わざる得ないというのが本音かもしれない。前述したけどスカイマーク支援に対してエアバスにA380を買うと約束してしまっている。さすがに2度もエアバスを裏切るのはなかなか厳しいと思うので何等か機材は買うことは確定。じゃJALみたいに開発中の最新鋭機A350や地方で大活躍のA320にするとか選択肢もある訳だけど機材・路線計画的な観点で見ると成田・羽田を中心とした幹線はこれ以上便を増やせないから中型機材を追加で入れても余剰率が高まる。(A350は国際線でこそ役に立ちそうだけど路線増えなければ追加しても意味ないし、B767からの置き換えとかもあるけど、国内転用するにしたも北陸新幹線開業で小松・富山就航していた中・大型機材は一部別路線転用したりと、やり繰りしている状況。売るにしても機齢古ければ・・・・)
小型機はまだ使い道はありそうだけど地方間輸送として路線拡大させてもあまり需要がないし、近距離国際線もLCCが相次ぎ参入で利益薄くなる一方。またエアバスの視点で見るとA380はあまり買い手がいないので、作ってしまったけどキャンセルされてしまった完成品・製造途中だったA380をどうにか捌く必要がある。当時完成品・製造途中だった機材はおそらく別のカスタマーに相当数値引きして売った可能性はあるけど、もともとの発注数はそのままでさらに追加で買う可能性は低く、もともとの発注数の内数に組み込まれていると思われる・・・。仮にそうだとすると、そのカスタマー向けに製造するために部品発注等は下請けに出していた可能性は高く、キャンセルしていたとしても多少なりとも損害も出ていた可能性もある。(故に新しい客を見つける必要は変わらないのかも) またエアバスは不人気化しつつあるA380の話題作りを欲しているので、導入済みの航空会社の追加よりは新規の航空会社に採用された事実の方がうれしいはず。

長々と書いたが中小型機に振替することは可能性としては低いんだろうと。では何を理由にA380を買うのか?だが、日経さんの記事でも触れられていたがハワイ線の拡充。

ハワイ線は日本人がよく利用するし、JASとの合併までは国際線中心だったJALはこの路線枠を持っていて、今でも多数の便が運航されている。ANAとしては最近JALを抜き首位となったが、ハワイ線でも優位に立ちたい・・・・。なら増便したいが前述の通り成田や羽田発着枠は満杯だし、アメリカ路線はアメリカとの政治交渉も絡んでいて、簡単に便を増やすことはできない。ならば今持っている枠はそのままで輸送数を増やすしかない・・・・。ならばB747導入?という選択肢も出てくるけど性能比較で大幅に差がある訳でもないから、それならばエアバスの顔も立てられるA380を選んだ方がマシとなる訳で消去法的にA380しかないという感じになる。

ちょうど今が両社の思惑としてはちょうど良いタイミングなんだと思う。

ただ、リスクも結構あるなぁと感じる。
ハワイ線って観光路線なので客単価は決して高くはない。ANAとしては輸送できる人数が限られるから増やしたいが先なんだろうけど、購入すると思われるA380に他の欧米路線のようなエコノミーよりもビジネスやファーストクラスの率を増やす展開ができるか?と言えば、難しいかなと思う。おそらくエコノミー率が多くなるのだろうと思うけど、そうすると季節変動やテロとかの騒動で利用者が減ったりすると別路線に転用したくても転用しにくいかな?と思う。結果として空気運ぶだけで利益率が下がるなんてオチにならなければ良いのですが・・・・(まぁビジネスクラスの余剰率高まると上級会員にとってはアップグレードしてもらえる率高まるから、個人的には嬉しいけど)

ともあれ、ANAも馬鹿じゃないからしっかり検討はするだろうけどどうなるのか楽しみ。

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ANA、超大型エアバスA380導入 3機1500億円
2016/1/1 2:00

 ANAホールディングスは欧州エアバス製の超大型機「A380」3機を国内勢で初めて導入する。発注規模は定価ベースで約1500億円。国内線は人口減で頭打ちとなっており、国際線の拡大に向け大型投資に踏み切る。2018年度にハワイ路線などに投入する見込み。1座席当たりの運航コストが低い超大型機の就航により、人気の太平洋路線で運賃競争が激しくなりそうだ。

 A380は総2階建てで500席超の座席設定が可能な世界最大の旅客機。1度に大量の旅客を輸送できるため、競合機に比べ1座席当たりの運航コストが約15%低いとされる。07年にシンガポール航空が世界に先駆けて就航させ、独ルフトハンザ航空やアラブ首長国連邦(UAE)ドバイを拠点とするエミレーツ航空が導入している。

 ANAは14年に国際線の旅客輸送実績で日本航空を抜き、国内首位に立った。ただ首都圏発着のハワイ路線で提供する座席数シェアは約20%。約35%の日航に差をつけられている。日本からハワイへは年間約150万人が訪れ、航空各社の平均搭乗率は80~90%。ANAはハワイ路線の既存機材の2倍超の座席数を設定可能なA380の導入で1便当たりの旅客数を増やし、シェアを高める。

 国内ではスカイマークが11年に6機のA380の購入契約を結んだ。前払い金の支払い遅滞などを理由に14年にエアバスが解約を通知。15年1月にスカイマークが経営破綻する一因にもなった。

 スカイマークには現在、ANAが16.5%を出資し、再生を支援している。15年8月の債権者による投票の際、スカイマークの大口債権者だったエアバスにANA支援案への賛成を求める見返りに、将来的な機材発注の可能性を伝えていた。